令和4年度税制改正大綱にみる「住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)」の主な変更点とは!?

住宅ローンを借りて住まいを新築・購入・リフォームする場合、一定の要件を満たせば所得税と住民税の一部から一定額が控除される「住宅ローン控除」の制度。

2021年末に令和4年度税制改正大綱が発表されましたが、住宅ローン控除についてもいくつかの変更点がみられます。

今回は、住宅取得計画に大きく影響する変更点についてわかりやすく説明します。

そもそも「住宅ローン減税(控除)」ってなんですか?

「住宅ローン減税(控除)」について簡単におさらい

まずは、住宅ローン控除がどのような制度なのか簡単におさらいしましょう。

住まいを新築・購入・リフォームする際、多くの人が「住宅ローン」を利用します。「住宅ローン減税(控除)」は、その返済状況を確定申告や年末調整の際に申告すれば、年末(12月31日)時点での住宅ローン残高の1%にあたる金額が所得税から税額控除される制度のこと。広く「住宅ローン減税(控除)」と呼ばれていますが、正式には「住宅借入金等特別控除」という名称の税制度です。

この住宅ローン控除の適用には、住宅ローンの返済期間のほか、取得時期や入居時期に関してさまざまな“要件”を満たしている必要があります。

令和4年度税制改正大綱で「住宅ローン減税(控除)」が見直し対象に

利息よりも多く還付される「逆ザヤ」状態が見直しに

2021年12月、与党の令和4年度税制改正大綱が発表されました。この中で住宅ローン減税(控除)についても見直しの必要性が指摘されています。

現行の住宅ローン減税(控除)は、控除期間は原則として10~13年間、控除率1%で税額控除されます。ところが、超低金利下の現状では、住宅ローンのなかには年利0.4%台で借り入れが可能なものもあり、住宅ローン減税で1%が控除されると「0.4%-1%=-0.6%」のマイナス金利に。つまり、10~13年の間、支払っている利息分よりも多く還付されることが問題視され、今回の改正で控除率は1%から「0.7%」へ縮小となりました。 

カーボンニュートラル推進のために、省エネ住宅を優遇

また、令和4年度税制改正大綱では脱炭素社会の推進(2050年カーボンニュートラル)を目指す政府の意向が強く反映されていることにも注目。住宅ローン減税(控除)の控除額が住宅の「省エネ性能」が大きく影響するような内容になっています。ZEH、認定住宅、省エネ基準適合住宅については住宅ローンの借入限度額や控除期間について優遇されます。

これまでの住宅ローン減税との比較(新築住宅)

控除率はもちろん、住宅性能によって借り入れできる金額に大きな差が生じています。住宅取得計画に大きく影響することが予想されます。

住宅ローン減税(控除)の恩恵を最大限に受けるためのポイント!

住宅ローン減税(控除)の見直しでどのくらい影響があるの?

令和4年度税制改正大綱によると、控除率はこれまでの1%から0.7%へと縮小されます。

たとえば、年収400万円の方が2000万円借入した場合の減税総額は、2021年時の税制下では204万円(拡充措置適用時)であったものが、2022年時には144万円に。60万円の差は大きい、といえるでしょう。

最大限の恩恵を受けるためには「省エネ基準」を満たした住宅であることが重要!

現行(2021年度)の税制度では、省エネ基準ではない一般的な住宅を購入する際の借入限度額は4,000万円ですが、2022年度は3,000万円に減っています。つまり借入限度額を上げるためには、2022年度は省エネ基準を満たす性能の住宅であることが必要。

さらに2024年以降に建築確認をとる住宅は「省エネ基準」を満たしていなければ、住宅ローン減税(控除)を受けられない、言い換えれば、一般住宅は住宅ローン減税(控除)の恩恵を受けられないということになります。

借入限度額、控除額のメリットを最大限に活用するためには、「省エネ基準」を満たした住宅を建てることを視野に検討する必要がありそうです。

まとめ

令和4年度税制改正大綱は住宅ローン減税(控除)について、大幅に見直す内容になりました。控除率の縮小は残念な改正ではありますが、一方、住宅性能に応じた借入限度額の上乗せ措置は検討するに値する改正内容です。

ZEHなどの省エネ基準をみたした住宅には快適性、健康や地球環境への寄与、ランニングコストの抑制などさまざまなメリットがあります。また、政府の住宅政策の目標として、住宅の省エネ性能の向上と推進に向けた動きが今後ますます活発化していくことは明らかです。

税制改正後は、住宅取得の選択肢として「省エネ住宅」をしっかり検討することが重要になりそうです。

(※本稿は令和3年12月24日閣議決定 「令和4年度税制改正の大綱」を基にまとめています。法案成立前の内容であることにご注意ください)

投稿者プロフィール

武田 純吾
武田 純吾経営コンサルティング事業部部長・ブランディングマネージャー
「お前は、建築業には絶対に進むな...」建設業の厳しさを知り尽くした父から贈られた言葉。けれど、苦労している父親の背中や、「きつい・汚い・危険」と言われる過酷な職場環境で歯を食いしばり懸命に働く家族や職人さんたちの姿が忘れられず「この業界を変えたい」と志し、コンサルティング業界の道に進み10年。豊富な実績を誇り全国の地域No.1工務店からの熱狂的なファンが多く、これまで建築業界にはなかった発想や唯一無二のアイデアで差別化を図り「ゼロからイチをつくる」ブランディングのプロ。2030年には新築着工棟数が半減する未来を見据えるなかで、業界全体の活性化のためにブランディングや生産性向上のノウハウを分かち合う「競争ではなく、共創」の考えを創造し、新たな建築業界の世界観をつくる”先駆者”。

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