建築会社や工務店の倒産が増えているのはなぜ?倒産リスクを避けるためのポイントも解説

「一生に一度の買い物」と言われるほど、住宅の購入はかかる費用が高額で、かつ生活に大きく関わるものです。しかし近年、住宅の施工者となる建築会社や工務店の倒産が増えています。今回は、建築・工事業でなぜ倒産が増えているのか、その原因や倒産した場合にどうなるのか、倒産リスクを避けるための建築会社・工務店選びのポイントを解説します。

工務店とは?

住宅の建築・リフォームを専門に手がけるプロフェッショナル集団です。一般的に、工務店は地域に密着した小規模な企業が多い傾向にあり、お客様のニーズや希望に基づいて、個別の要件に合わせた住宅を提供します。

建築会社や工務店の倒産はどれくらい増えているのか?

2020年より続く新型コロナウイルス感染症の流行は、さまざまな分野に影響を及ぼしています。一見関係がないと思われがちな建築業でも、その影響は顕著です。コロナ禍での経済停滞が主な原因で、飲食店などの閉店により解体工事の需要が一時は増えたものの、2022年時点で建築会社の売上はコロナ禍前より減少しています。

コロナ禍によって2022年の建設・工事業の倒産数は飲食店に次ぐ数となっています。建築会社や工務店は毎年約3%程度が事業を廃止しているといわれるため、今後も倒産が増えることが予想されるでしょう。

なぜ、建築会社や工務店の倒産が増えているのか?

建設・工事業の倒産が今後も増えていくと見込まれますが、その主な原因として以下の3点が挙げられます。

ウッドショック

ウッドショックとは、木材価格が高騰した状態を指します。ウッドショックが起こったのはこれが初めてではなく、1990年代の天然林保護運動による供給量の減少、2000年代のインドネシアにおける伐採規制強化に続く3度目です。
今回のウッドショックの原因は、新型コロナウイルス感染症の流行です。世界各地で感染予防のために実施されたロックダウンにより外出規制が強化され、経済活動も低迷しました。木材のグローバルサプライチェーンが滞り、さらにオーストリアでのアジア向け木材輸出規制、東欧で木材伐採を行っていた労働者の移動が困難になったことも、ウッドショックの原因となっています。
このような複数の要因によって引き起こされたウッドショックは木材価格を押し上げ、輸入木材が必要不可欠な日本国内の建築業界に深刻な影響を及ぼしているのは確かです。

半導体不足

コロナ禍の影響は、パソコンや電化製品、自動車などに欠かせない半導体の供給にも及んでいることはよく知られています。半導体の生産拠点での新型コロナの集団感染発生による工場閉鎖やサプライチェーンの混乱で供給が滞ったことに加えて、いわゆる「ステイホーム」が進みテレワークが促進されたことで、パソコンの需要が増加したことも、半導体不足を招いた原因の1つです。

半導体は住宅設備にも必要不可欠であるため、半導体不足は工事計画を滞らせてしまいます。半導体は需要が大きく、完全に解消されるまでにまだ時間を要する上、半導体価格の高騰により材料費が経営を圧迫することが、倒産の要因となり得るのです。

消費税増税

2019年10月、消費税が8%から10%に引き上げられました。住宅の建築にかかる消費税は多く、建築・リフォーム工事費用をはじめとして土地の造成や整地、住宅ローンや登記にかかる手数料のほか、引っ越しや家具・家電購入費用などにも消費税が課されます。新築や建売住宅購入時は、中古住宅購入にはない建築費用にかかる消費税が増えるため、消費税増税で金銭的負担が増えたことで、消費税増税翌年の2020年の持ち家着工件数は前年比で約13%のマイナスを記録しています。

このような費用増による需要の冷え込みが建築会社の売上にもつながり、倒産の要因となっていると考えられます。

建築中に建築会社や工務店が倒産した場合はどうなるのか?

新築住宅を建設している中で、もし施工を依頼した工務店が倒産した場合、建設中の住宅はどうなるのでしょうか。住宅の建設がストップしてしまったり、支払った費用が返ってこなかったりすると、依頼した側は不安に感じてしまうはずです。では、実際に住宅建築中に施工者である建築会社や工務店が倒産した場合にどうなるのか、解説していきましょう。

住宅の種類や倒産した際に行われる法的手続きによって対処が変わる

建設工事が継続されるかどうかは、法的手続きによって対処法が変わります。倒産と一口に言っても事業を精算する「破産」と、民事再生や会社更生による「再建」の2種類があります。このうち、破産のケースでは事業停止となり建築や売買契約は停止となりますが、破産した工務店に工事を継続する引き受け先を見つけてもらう、または自分で引き受け先を見つけなければなりません。

破産とは異なり、再建の場合は契約が継続となります。建設中の住宅工事は引き渡しまで進められる可能性が高くなりますが、管財人により請負契約が解除となるケースもあります。

支払い済みの前払い金はどうなる?

住宅建築の請負契約時には、前払金を支払うことが多いものです。依頼した工務店が破産となり請負契約解除となった場合、破産手続きの際に前払金の返金が行われますが、損害賠償については全額が支払われないこともあります。再建で請負契約解除となった場合でも、共益債権として損害賠償が弁済されます。契約が解除されない場合は工事が継続されるため、前払金の取り扱いに変更はありません。

また、建売住宅を完成前に購入した場合、宅地建物取引業法で手付金に保全措置が取られているため、契約が解除された場合は前払金が戻ってきます。しかし、施主が契約を解除すると前払金は放棄となります。

倒産手続きの種類を確認しよう

ここまで解説したように、住宅建築を依頼した工務店や建築会社が建築途中で倒産した場合の対処法は、その会社の倒産手続きの内容によって異なります。もし建築工事が完了しないままに施工者となる会社が倒産した際は、どのような手続きで倒産したのか、その種類を確認し、弁護士に相談することをおすすめします。

倒産しかけの危ない建築会社・工務店を見分けるときのポイント

住宅は大きな買い物なので、建築を依頼する工務店は倒産の心配がなく信頼できるところを選びたいものです。そこで、倒産が迫っている可能性が高い、危ない建築会社や工務店を見分けるためのポイントをご紹介します。

資金不足による大幅値引き

大幅値引きを行っている工務店は、資金不足に陥っており、経営状況が悪化して倒産が近い可能性があります。同時に、契約を急かせたり入金を前倒ししたりすることもあるため、注意が必要です。あまりにも値引き幅が大きい、または契約を急がせるような工務店は避けた方がいいでしょう。

社員の大量解雇

社員が多数解雇されている工務店も、倒産寸前の可能性があるため注意すべきです。さらに役員などの社員も退社している工務店は、倒産が迫っているかもしれないため、施工を依頼しても住宅完成前に倒産するリスクも高いといえるでしょう。ただし、外部にいる施主は社員の大量解雇に気づくことは難しいかもしれません。

取引先への支払いをしていない

取引先への支払いが滞っている、または遅れている工務店も、倒産が迫っている可能性があります。倒産するかなり前から支払いのストップや遅れが始まっているものですが、社員の大量解雇と同様に外部からはわかりにくいポイントです。一般的に、住宅建築では内装や畳などを扱う現場の職人に手配するため、これらの職人に確認できれば支払いの遅れや滞りが確認できるでしょう。

工事がストップしている現場がある

他の住宅の新築工事がストップしている現場がある工務店も、倒産のリスクが高いといえます。これは、上記の取引先への支払いが止まっていることが要因で、職人が作業を行わなかったり、施主とトラブルを起こしていたりする可能性があります。1ヶ所だけではなく、複数の工事がストップしている現場がある工務店は、何らかの問題が発生していると考えていいでしょう。

まとめ

建設会社や工務店の倒産には、世界情勢や経済情勢などいくつかの要因が挙げられます。建築中に倒産した場合は建築工事が継続されるとは限らず、施主へ金銭的負担がかかることもあります。そのような事態を防ぐには、今回ご紹介したポイント参考に施工を依頼する際に危ない建築会社・工務店を見極めて、信頼できる会社を選びましょう。

投稿者プロフィール

武田 純吾
武田 純吾経営コンサルティング事業部部長・ブランディングマネージャー
「お前は、建築業には絶対に進むな...」建設業の厳しさを知り尽くした父から贈られた言葉。けれど、苦労している父親の背中や、「きつい・汚い・危険」と言われる過酷な職場環境で歯を食いしばり懸命に働く家族や職人さんたちの姿が忘れられず「この業界を変えたい」と志し、コンサルティング業界の道に進み10年。豊富な実績を誇り全国の地域No.1工務店からの熱狂的なファンが多く、これまで建築業界にはなかった発想や唯一無二のアイデアで差別化を図り「ゼロからイチをつくる」ブランディングのプロ。2030年には新築着工棟数が半減する未来を見据えるなかで、業界全体の活性化のためにブランディングや生産性向上のノウハウを分かち合う「競争ではなく、共創」の考えを創造し、新たな建築業界の世界観をつくる”先駆者”。

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