大地震から大切なものを守りたい! 揺れに強い耐震住宅の仕組みとは?

2022年は大正時代に発生した関東大震災より100年という節目の年でした。近年は全国各地で大地震が複数回発生し、家屋の倒壊など甚大な被害をもたらしています。
そしてこのような状況に、大地震から命を守る地震に強い住宅へのニーズがますます高まっています。

「数十年のうちに巨大地震が必ず発生するというけれど……」
「耐震性の高い住宅ってどういう仕組みなんだろう」

という不安や疑問はありませんか?
今回は、地震の揺れに強い「耐震住宅」についてその特徴などを説明します。

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日本は「地震大国」

日本列島はいくつかの海洋プレートが陸のプレートに沈み込んでいるため、大昔から地震が多く発生している場所です。

近年は大規模な揺れと被害をもたらす地震が多発している印象があります。
そして、今後30年以内に約70%と高い確率で発生すると予測されている「南海トラフ地震」「首都直下地震」への備えと対策が急務とされています。

知ってるようで知らない「地震のメカニズム」

地震は、プレートによって起きる地震と活断層によって起きる地震があります。
プレートが原因の地震は、地下のプレートが他のプレートと押し合ったり、引っ張り合ったりすることによりズレが生じることで発生します。日本列島は4つのプレートの上に乗っている状態なので、地震が多発するのです。

また、断層はプレート同士の押し合いによって生じたズレのことをいいます。なかでも今後も動く可能性が高い断層を「活断層」といいます。日本には活断層が2,000ヶ所以上あるとされ、いつどこで地震が発生してもおかしくない状態にあります。

日本で発生する地震の回数に驚愕!

2021年から過去12年間の年間平均地震発生回数は、およそ3150回。また、震度1以上の地震発生回数を多い順に並べると2011年(10638回)、2016年(6587回)、2012年(3138回)でした。
2021年は2424回と2012年の記録に次いで4番目に多く地震が発生していました。

「最近、何となく地震が多いな」という印象はあながち間違いではなさそうです。

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地震の「揺れ方」の違いで被害内容が異なります

地震には「横揺れ」と「縦揺れ」のふたつの揺れ方があります。
岩盤のズレで発生する揺れ(波)は、地面に対して水平方向に振動するのが「横揺れ」、縦に振動するのが「縦揺れ」で構成されます。
また、縦揺れは横揺れに比べて進行速度が速いという特性があります。緊急地震速報はいち早く地面に伝わる縦揺れをキャッチして発信されています。

地震の被害と聞いて、「津波」を思い起こす方が多いでしょう。甚大な被害をもたらした東日本大震災は、プレートのひずみが原因で発生しました。プレート型の地震は海底で大きな横揺れを引き起こすと高い津波を発生しやすいという特徴があります。

また、高い確率で発生が心配されている首都直下型地震は、大変狭い範囲内での発生が予測されています。直下型地震はすぐ足元が震源地と言っても過言ではなく、地表に届くスピードが速い縦揺れが直撃するため建物の倒壊などの大きな被害をもたらします。

一般的な住宅はどれくらいの震度まで耐えられるのか?

地震の揺れに耐えうる性能基準は建築基準法で定められています。

現在の耐震基準を基に建てられた木造住宅は、

震度5強程度の揺れであれば建物の構造を保持でき、震度6強~7程度の揺れならば建物の倒壊・崩壊に至らないよう設計されています。

地震の揺れに強い「耐震住宅」

「耐震住宅」とは、地震の揺れに強い性能のある住宅のこと。
1981年に改正された建築基準法で定められた「新耐震基準」を満たし、耐震構造の工法で建てられています。

その性能は、震度5程度の揺れでは建物の構造に影響はなく、震度6強~7程度の揺れでも倒壊・崩壊しないとされています。

耐震住宅にする技術は大きく分けて3種類

「耐震・免震・制震」の3つの技術で地震に強い住宅にすることができます。

それぞれ「揺れ」へのアプローチはまったく異なるものなのですが、「耐震住宅」のひと言でくくられ、混同されがちです。そこで耐震・免震・制震について特徴などをくわしく解説していきます。

耐震

建物の構造を頑丈にして地震の揺れに耐える技術が耐震です。
住宅の骨組みとなる柱などの構造体には強度の高い材料を採用するほか、壁・柱・梁などを一体化した工法で住宅の耐震性を高めます。

耐震構造が組み込まれた住宅は揺れ自体は感じやすいのですが、建物の倒壊を防ぐだけの強度があります。最高レベルの耐震等級3の住宅ならば、大震災レベルの地震の揺れでも耐えられる性能を持っています。

免震

免震は、建物と地面の間に免震装置(ダンパーやゴム製アイソレーターなど)を入れ、地震の揺れを建物に伝えないようにする技術です。
免震装置が地面の揺れを吸収するので、建物はほとんど揺れないのが大きな特徴。建物自体へのダメージを抑え、倒壊や変形を防ぎます。

ただし、地震対策としての効果は耐震・制震と比べて大変優れていますが、その分コストがかかること、さらに地盤の制約を受けやすい、台風など横から吹き付ける強風に弱いといったデメリットがあります。

制震

制震は地震の揺れを吸収して建物を守るという点では、先に紹介した免震と共通する技術なのですが、制震住宅は地面の上に建物を建てる点が免震住宅と異なる点です。
耐震住宅は内壁と外壁の間に制振装置(ダンパー)を入れ、地震の揺れを熱エネルギーに転換して建物の変更・倒壊を防ぎます。

建物が地面と接しているため1階は揺れを感じますが、2階以上のフロアでは揺れが抑えられ家具の転倒といったリスクが低減されます。

まとめ

世界でも有数の地震発生国である日本。しかも今後数十年の間に高い確率で大地震の発生が予測されています。
そのような状況を背景に、防災・減災対策として地震の揺れに強い住宅「耐震住宅」が求められています。

地震の揺れから住宅を守る技術には耐震・免震・制震の3種類の技術があります。
どの技術を採用するかは、計画する住宅の規模や地盤などによっても異なります。まずは専門家に相談するのがよいでしょう。

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投稿者プロフィール

武田 純吾
武田 純吾経営コンサルティング事業部部長・ブランディングマネージャー
「お前は、建築業には絶対に進むな...」建設業の厳しさを知り尽くした父から贈られた言葉。けれど、苦労している父親の背中や、「きつい・汚い・危険」と言われる過酷な職場環境で歯を食いしばり懸命に働く家族や職人さんたちの姿が忘れられず「この業界を変えたい」と志し、コンサルティング業界の道に進み10年。豊富な実績を誇り全国の地域No.1工務店からの熱狂的なファンが多く、これまで建築業界にはなかった発想や唯一無二のアイデアで差別化を図り「ゼロからイチをつくる」ブランディングのプロ。2030年には新築着工棟数が半減する未来を見据えるなかで、業界全体の活性化のためにブランディングや生産性向上のノウハウを分かち合う「競争ではなく、共創」の考えを創造し、新たな建築業界の世界観をつくる”先駆者”。

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